源氏物語感想(若菜下)柏木クソすぎるだろ!
前回の源氏物語感想からだいぶ時が経ってしまいました…。すみません。
最近、大河効果で源氏物語関連書籍がいっぱい発売されていてついつい色々買ってしまっています。読みきれないのに…。「推しジャンルの供給がすごい!」みたいな心境です。
感想をコンスタントに上げられていたときから最後まで読み終わってはいたので、今や記憶がだいぶ薄まってしまっております…。
読んでいた時のメモに基づいて「若菜下」の感想&好きなシーン(好きなシーンを小見出しにしています)をメモしておきたいなと思います。
<注意>光源氏と柏木への暴言がすごいです。お気をつけください!!!!!!
前回の感想はこちら
蛍兵部卿の宮
源氏の弟宮で玉鬘に求婚したりしていた風流人として名高い蛍兵部卿の宮さん。
これまでいい人感を出していたのに、お前も亡くした妻の面影を他の人に探して真木柱と結婚して、似てないなーと思ってがっかりして冷める系男だったのかよ…。悲しすぎる…(源氏物語こういうやつばっかだな?)。
だいたいなんで好きな女(玉鬘)を髭黒に奪われたのにその髭黒の娘と結婚してるんだよ!!どんな感情なの!?
のちの夕霧と言い、真面目で好青年と思ってたキャラに裏切られるとショック受けすぎてしまう。光源氏はもはやああいう人なので、何をやっても深くショックを受けることはないんだけど、光源氏以外のキャラが何かやるとめっちゃ「ハァ〜!?」ってなっちゃう……。こう思うと光源氏ズルいな?
兵部卿の宮がそういうタイプの人間という伏線張っといて欲しかった(?)…。 今まで良い人そうだったのに…と思って前の方を読み返したら、前から多情を批判されてる描写がありました。すみませんでした。
一方で、玉鬘を巡る恋のバトルで兵部卿の宮に勝った髭黒は順調に出世している描写があるので、もしかして、玉鬘は兵部卿の宮と結婚しなくてよかったね〜の描写だったりするのかな。
女三宮に想いを募らせる柏木
女三宮を手に入れることはできないから、代わりに女三宮を垣間見たきっかけになった猫を手に入れようとする柏木。春宮に上手いこと言って六条院から猫を取り寄せ、上手いこと猫をGET。柏木、若いのに春宮の信頼も厚くて口も上手いの、なかなかやるな……。「ねう〜ねう〜」と鳴く猫に対して「寝よう寝ようなんて積極的だな」と喜ぶ柏木、キモい笑
紫の上の心情がつらい
若菜の帖は上巻も含めて催し事の描写も一段華やかな気がするな〜!朱雀院の五十の賀の描写はなんと美しいことか!雅すぎる〜。実写映画とかで見てみたいな。
紫の上、明石の御方、明石の女御、女三宮の4人の女性による合奏のシーンはとても雅!しかしながらその優雅さの裏で、琴を女三宮につきっきりで教える源氏と、「自分にはついぞ琴を教えてはくれなかったのに」と胸を痛める紫の上が痛ましい…。
そして若菜下で最も好き(心が苦しくなるという意味で)なシーンの1つだけど、源氏が「私の人生は悲しいものだった。それに比べてあなたは幸せで、気楽な人生だ。女三宮を(正妻に)迎えたことは少しは不愉快があるかもしれないけど、かえってあなたへの愛は深まっているのだから。」なんてことを当然のように言い放つシーンのつらさったらない。紫の上をこれほどまでに苦しめている源氏がそれを言うか?!という感じである。それに対して紫の上は「確かに私は過分な身の上だったかもしれません、でも心には悲しみばかりが増えているのです」と出家を願う。そんな切実な紫の上の出家の希望さえ、源氏は「後に残された私はどうなる!」と言った調子で聞き入れず…。酷すぎる!本当にこの辺りの源氏と紫の上の心の間の深い溝は読んでいてつらい。
その流れで、紫の上は立派な人だからということを伝えるために過去の恋人たちの悪口を言っていく光源氏、かなり最悪である。しかもこの悪口がなんかもう、元カノの悪口の解像度高過ぎない?六条御息所の「高い見識のある才女だが恋人としては扱いにくい性格。怨むのが当然だと思うことを思い詰めてずっと忘れずに恨み続けるからこっちは苦しくてならない。自己を高く評価させないではおかないという自尊心が年中つきまつわっているような気がして、気に入らない男にならないようにと見栄を張り過ぎて自然に足が遠のいた。」みたいな言い方がなんともリアル。他の恋人たちのこともしかり…。
女三宮の女房・小侍従に手引きを頼もうと迫る柏木
柏木が女三宮の女房である小侍従に手引きをしてくれるよう頼むシーン。「朱雀院があんなに心配して三宮を源氏に託したのに、源氏は紫の上様ばっかり愛していて三宮はお可哀想」、「朱雀院もきっと悲しく思ってる」、「たくさんの妻を持つ人より一途に愛する人と結ばれた方がいい」みたいな、だから三宮を自分のものにしても良いんだという正当化みたいなのを並べるのが「コイツ…」ってなる。ていうかそもそも柏木の正妻って同じ朱雀院の娘である三宮の姉の二宮じゃん!二宮のことを適当に扱ってることでむしろ朱雀院に心配かけてないんか!?ってなる(柏木的には最低限夫婦らしいことはちゃんとやってるらしいけど)し、三宮を我が物にしたらなおさら二宮も三宮も不幸になって朱雀院悲しむやろ!何言ってんだ!ってなった。
柏木の訴えに対して小侍従がピシャリと論破してたのはかなりスッキリして良かった(その後結局手引きしちゃったけど…)。
女三宮と密通してしまった柏木
ついに無理やり女三宮と関係を持ってしまった柏木。「源氏の妻を襲ってしまった…バレたらもう終わりだ…」ってバレない間から引き篭もりになる柏木、じゃあ初めからこんなことやるなよ…。源氏を見ろ!朱雀院が出家した途端、朱雀院の寵妃だった朧月夜を抱きに行くし、父帝の妻である藤壺を妊娠させても素知らぬフリをして子どもの後見人になるし…。いや、今思うと源氏、マジで厚顔無恥すぎるな…?
柏木、女三宮と無理やりことに及んでおきながら、ショックで嘆き悲しむ三宮に対して「そんなに私に冷たくするなんて酷い、そんなふうに接するならもう私自◯しますよ!」みたいな脅しまでしだして、ちょっとクソ野郎すぎるって!
六条御息所の生き霊が死霊にパワーアップ
紫の上が危篤状態になり、その原因として六条御息所が再登場!六条御息所さん、まだ暗躍(?)なさるんですか!?!?と驚く。
死霊になっても娘の秋好中宮を心配していて、やっぱり六条御息所は良い女だよなと思う…。私は六条御息所好きなので、悪霊として色々やっててもやっぱり肩持っちゃうね。紫の上に対して自分の悪口を言ったことを恨めしがっている御息所だったが、ちょっと夫婦の間で悪口言っただけじゃんみたいな態度で反省してない光源氏、そういうところだぞ〜!あと、御息所は源氏が恨めしいなら源氏に取り憑けば良いじゃんとも思ったが、ちゃんと「源氏に取り憑きたいが、神仏の加護が強すぎて取り憑けず、周囲の者に取り憑いている」という説明がなされていましたね。源氏物語のこういう読者の疑問に対して誠実にアンサーする(?)ところ好き。
女三宮の密通が光源氏にバレる
手紙から密通がバレるのって迂闊すぎて、「手紙みたいな証拠に残るもの、残さないようにすることはできないのか?」と思っていたけど、源氏が女三宮にあてた柏木の手紙を見つけて「自分が藤壺と密通したときはもっとぼかしたことしか書かなかったのに柏木はなってないな…」みたいな批評しだしたから、そうだよな。と思った(源氏、なに人妻との密通の上級者面しとるねん!!)。御息所の件といい、気になるところはだいたい作中で言及されていて本当にすごい。そして、バレる前からバレたらどうしよう…って病んで引きこもりになってた柏木、光源氏にバレてますます病む。柏木、三宮を無理やりものにして孕ませて病んで死ぬ(この時点ではまだ死んでない)というハイパー身勝手男で驚いた。さらに光源氏にもイビられてますます病む(光源氏最悪)。あとなんかこれまで正妻の二宮に対して不誠実だったのに、もう死ぬとなったらいい夫感出してるのうざすぎる…。
それから、源氏が女三宮と話すとき、「あなたもこんな年寄りの夫を軽蔑してると思いますけどね…」みたいな「若い男と不倫しやがって感」を言外に滲ませる物言いをするようになり出したの、ちょっと性格悪過ぎないか。女三宮は被害者なんだが!(この時代にはそういう視点はない)
その他、若菜下の好きなシーン
「色々な物語を読んで、恋多き男も最後には1人の女と結ばれるというのにどうして私はこんなにずっと苦しみ続けているのか」と煩悶する紫の上のシーンが大好きだ。これこそ源氏物語の当時の存在理由の1つだったりするんじゃないかと思う。女性の苦しみを丹念に書き出して、平安時代の女性たちに共感をもたらし、孤独な苦しみから救うために書かれたんじゃないかな〜って思ったりする。
全方位に悪口を言って申し訳ございません。しかし正直言って源氏物語で一番好きなのはどこかと問われたら、間違いなく若菜です。この、つらくて心がめちゃくちゃになるかんじがいいんだよな…。
今回はこの辺で!次回も柏木に暴言を吐き続けることになりそうです…笑