前回までの感想はこちら↓
梅枝
裳着の儀式を行い、春宮に入内する明石の姫君のために源氏や各女人がお香を調合して蛍兵部卿の宮がそれを品評したり、源氏がいろんな人の書くかな文字を批評する、という回。雅すぎる!!
かな文字の批評では、源氏は六条の御息所の文字を最上級に位置付ける。御息所って本当に、悪霊になって夕顔や葵の上を死に追いやった(疑惑)のある人であるのに、源氏はずっと最上の貴婦人として話題に出すのが不思議な関係というか素敵な関係というか。
他にも秋好中宮や藤壺、朧月夜のかな文字について批評する源氏…元カノの話を紫の上にすな〜!(恒例)永遠の本命の女性であり継母であり不義の子を産ませている藤壺とか須磨流たくのきっかけになった朧月夜の話とかをサラッと紫の上にするのほんとすごいよねこの人…。
源氏物語って、前の衣配りの回などもそうだし、途中途中に「源氏の彼女振り返り紹介回」みたいなのある気がして、”長編でキャラが多い作品の工夫"みたいなのをしっかりやってる(?)のがすごいと思う…。
しかもその方法がそれぞれの女人が調合した香の批評とか、各人のかな文字の感想とか、人柄が見えるのに加えめちゃくちゃ風流ですごく良い…。それぞれの人が調合した香の意味とかが詳しくわかればもっと楽しそう。きっとキャラが伝わってくるような感じなんでしょうね。香にも詳しくなりてえ〜。源氏物語、読めば読むほど詳しくなりたいことが増える。
藤裏葉
夕霧と雲居の雁の純愛がついに実る!源氏物語で幼馴染からの恋愛を実らせてゴールインなんて他には無くて可愛すぎる。最高!
…なんだけど、みんなが「夕霧は一途!純愛!」って言ってるのに、ちゃっかり藤典侍とは恋人同士なの、何? 愛人いるんじゃねーか!平安貴族はこれくらいは普通なんだね…。というか藤典侍が身分柄、妻にカウントされてない可哀想な存在と見るべきなのかな…。
まあそれは良いとして、三条の大宮の住んでいた三条の屋敷を改修して住んで昔を語る夕霧夫婦良すぎるな…。二人の思い出の屋敷、おばあちゃんが優しくしてくれた屋敷にまた二人で戻ってくるなんて本当にロマンチックで素敵。源氏で一番可愛いカップルだよ。
そして明石の姫君の世話役に明石の君が…!
明石の君が明石の姫君の立派な姿に嬉し涙を流すのが、本当に良かったね…って泣ける。紫の上と明石の友情も素晴らしい…。
マジでこの帖は「源氏物語・完!」ってくらい全てが大団円の集大成じゃないですか?
明石への嫉妬に苦しんだ紫の上と、娘を紫の上に託して悲しんだ明石が友情を築き、明石の姫は春宮に入内、引き裂かれた息子たちの恋は成就し、源氏は臣下としては最高の位に昇進。
ここからなんですよね…。ここで、いろんなものにケリがついてハッピーになり、あとは全部が崩れていって悲しい結末に向かうだけ…みたいな…。そのためにしっかり一度全部を回収するの、本当に長編物語として真摯だ…。