よじょうブログ

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源氏物語感想(若菜上・後編)明石一家大好き

源氏物語・若菜上の続きの感想です。

ここらへん、好きなシーンのオンパレードすぎて、長くなる長くなる。。

ちなみに若菜上感想・前編はこちら。

yojo-takusan.hatenablog.jp

 

明石の姫が懐妊し、宮中から六条院にお宿さがりすることに。明石の姫に会いに行く折に女三の宮にも会いに行く紫の上。

紫の上の心情、「少女時代から養われて来たために、自分は軽侮してよいものと見られて、良人は高貴な新妻をお迎えしたものであろうと思うと寂しかった。」という部分、全体の中でも一番好きまであるシーンです。

他の妻を迎えたことそれ自体より、あなたは心の中で私のことをそんなふうに扱っても良い存在と軽んじていたんだということが悲しいんだ、という失望感みたいなのがすごくリアリティがあるというか。

 

女三宮と紫の上が「雛遊びはいつまでもやめられないものであるとかいうことを語っている」という部分がなんだか面白かった。平安女子トークあるあるネタってこんななんだ(笑)

 

明石の姫宮の出産。ここはあさきゆめみしでも大好きなシーンなのですが、実の祖母である明石の尼君から自分の出生のことを聞いた姫が「身分が低く遠い田舎の生まれだったにもかかわらず、養母の紫の上が愛してくれたからこそ、源氏の娘として尊敬を受ける自分の今の身の上があるのだ。思い上がった心で東宮後宮に侍して、他の人たちを自分に劣ったもののように見たりしてきたのは過ちだった。」と感じ入るシーン、本当に良い…。

母の明石の君は姫に昔の真実など聞かせては自身を悲観することになるのではないかと尼君を嗜めようとするのも、明石の君の思慮深さと姫を思う気持ちが表れていて大好き。でも姫は明石の君が心配せずともちゃんと自分の生まれを受け止め、実の母の明石の君、養母の紫の上が自分を愛してくれてここまでの地位に上り詰めることができたことに感謝し、このことを教えてくれた明石の尼君にも敬意を表すのが本当に素敵。明石一家は本当に素敵で泣ける。

 

そして明石の姫君が男宮を産んだことを知った祖父・明石の入道は山に入って行き、明石の君と尼君に最後の文を送る。ここも本当に泣きそうになった…。明石の姫君に対する周囲の人たち(紫の上や明石の君、明石の尼君、明石の入道ら)の愛情が本当に泣ける。尼君の「風変わりな人だったが、縁あって若い時から愛し合った二人の中には深い信頼があったものですよ。どうしてこの世の中でいながら逢うことのできない所へあの方は行っておしまいなすったのだろう。」と涙する様子がかなりじんとくる…。源氏物語の夫婦は基本的にしんどそうなのばっかりなんだけど、入道と尼君の夫婦の絆、好きだなあ(入道はかなりの変わり者だけれども、振り回されながらもずっと一緒にやってきた尼君、良い。)

 

そして、明石の君の紫の上に対する信頼、感謝が本当に最高。明石の姫に「紫の上様にあなたをお譲り申し上げました時には、これほどまでの愛をあなたにお持ちになることは想像できませんで、それ以後もただ世間並みのよいといわれる継母ぐらいのことと思いましたが、あの方の御愛情はそんなものではありませんでした。あの方にお任せいたしますほど安心なことはないとよく私はわかったのでございます。」と伝える明石の君のところも泣ける。夫の他の妻の子どもである明石の姫をこんなにも愛情深く立派に育て上げた紫の上にも本当に泣ける。

明石に対して紫の上についてのの軽口を言う源氏に、明石が「冗談でも紫の上様のことをそんなふうにお言いになるものではない、思いやりがないことです」と嗜めるの、ほんっっっとうに良くないですか。この一連の流れに象徴されるような、紫の上と明石の女性同士の絆・友情的なものは源氏物語の好きな部分のトップクラス。

あと、宇治十帖のラストの薫もそうだけど、「自分が後ろめたいことしてるからって相手に対しても変な邪推をする男」みたいなシーン、いいよね(良くはない)。明石が持つ入道による願文の入った箱を見て「何の箱ですか?恋する男が長い歌を読んで封じて来たものかな」なんて言う源氏に「ご自身が若返ったからって、私までこれまで言われたこともないような冗談を言われるなんて」と返す明石、いいねえ。紫の上も明石も、源氏には勿体無いくらいいい女だよ…。

 

一方夕霧は、長年恋していた雲居の雁を妻にできて安心してもっと張り合いのある女と付き合いたい〜ってなり出しててムカつく〜!長年の恋を実らせてまだ1帖しか経ってないよ!?夕霧、お前だけは源氏物語の良心であってくれよ…。

 

若菜上は六条院で夕霧や柏木たちが蹴鞠をしているときに猫によって御簾が巻き上げられて、夕霧と柏木が女三宮の姿を見てしまうところまで。夕霧は人に姿が見られるようなところに立っていた女三宮を軽率な人で好ましくないと思うけど、元々三宮に焦がれていた柏木にはその欠点が見えなくなっていてますます夢中になってしまうという、恋とは人の欠点を見えなくするものという様子が描かれているのが面白かった。「人に見られるような振る舞いをするなんて軽率な人だな。」ってマイナス評価になるというのも、平安時代と今の感覚の違いを感じて興味深い描写だった。